東京地方裁判所 昭和38年(ワ)5879号・昭39年(ワ)11599号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判決理由】……によると、楢原唯一は昭和三八年四月一五日付自筆証書遺言により、本件第一建物を原告に、本件第二建物を被告楢原繁雄、同楢原照夫にそれぞれ相続せしめる旨の意思表示をした(ただし、本件第二建物については、同月二六日付自筆証書遺言により右建物を被告楢原繁雄、同楢原照夫、同金子きん、同落合久子の四名に相続せしめると変更した)事実が認められ、他に右認定を左右する証拠はない。ところで、特定の相続財産を特定の共同相続人に指定した場合、特別の事情のない限り、遺産分割方法の指定であつて遺贈ないし相続分の指定ではないと解すべきである(瑞民法第五二二条第二項、第六〇八条第三項参照)。そして、前記遺言においては、本件建物を原告らに「相続」せしめるというのであり(遺贈は相続ではない)、また福原唯一の全体としての相続財産の範囲とこれに対する原告ら共同相続人の相続分の割合が直接にも間接にも明確にされていないし、他方、楢原唯一が前記遺言によつて本件建物を相続財産の範囲から除外して原告らに取得せしめること、あるいは原告ら共同相続人の法定相続分を変更することを意図したものと認めるべき格別の証拠はない。
そうすると、前記遺言による遺産分割方法の指定に従い遺産分割がなされたころの主張立証のない以上、本件第一建物は相続により原告の所有に属することにはなつたが、それは法定相続分(三分の一)にしたがい三分の一の持分権を取得したにとどまるものというべきである。もつとも、原告が本件第一建物につき持分権を有するに過ぎない場合においても、保存行為として、本件第一建物に対する被告落合浩三の前記実体関係のない登記の抹消を求めることができ、また同被告に本件第一建物の引渡しを求めることができることはもちろんである。(篠原幾馬)